特別区の志願者にとって、人生を左右するのが希望区選び。私も申込期限ギリギリまで悩みました。
特別区はそれぞれ独立した自治体なので、一度どこかの区に採用されると後から別の区に移ることはできません。
(一応、人事交流制度というもので別の区へ転職できますが、家庭の事情などで本当にやむを得ない場合のみです)
基本的には、試験成績が良い人から順に、希望区への受験資格を得ることができます。
したがって、人気区を希望した場合、好成績を収めなければ受験の機会すら与えられません。
そうなると、自分が志望している区の人気度はどうなのか気になりますよね?あえて人気区を避けることで、手堅く合格したいという方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、人気区はどこか?区ごとの倍率はどのくらいか?様々なデータか考察していきたいと思います!
人気区はどこか?

まず大前提として、区ごとの希望者数は公式からは一切明かされていません。
したがって、人気区はもちろんのこと、区ごとの倍率も不明となっています。
しかし、手掛かりが何も無いわけではありません。
合同説明会、各区の人事行政データや独自の調査から、ある程度精度の高い予測を立てることが可能です。
特別区合同説明会での人気度
毎年1月頃、23区合同で大規模な説明会が行われます。残念ながら令和3年は新型コロナウイルスの影響によりオンライン配信となってしまいました(各区・組合紹介動画)。
実はこの合同説明会、人気区とそうでない区が客観的にはっきりと分かる非常に残酷な(有益な)イベントなのです。
その理由を説明します。
まず特別区合同説明会は、それぞれの区が個別のブースを設け、参加者は説明を聞きたい区のブースに足を運ぶシステムになっています。
各区が個別に説明会を開くというシステム上、参加者でごった返す区もあればスカスカの区もあり、人気が一目瞭然となってしまいます。
人気区は、説明会が始まる前から行列ができるほどです。ブースには定員がありますので、人気区の参加者は数十分前から並び始めます。
一方で不人気の区は、区職員があの手この手で参加者を説明会へと誘導しようと頑張る姿が見えます。

悲しいかな、この説明会では各区の人気不人気がかなりはっきりと分かってしまいます。。
過去に参加した経験から、ざっくりと次のような傾向が見て取れました。
人気度 | 区(専願の江戸川区は除く) |
---|---|
大人気 | 千代田、文京区、世田谷区、中野区、杉並区 |
人気 | 港区、大田区、渋谷区、豊島区、目黒区、新宿区 |
まあまあ | 中央区、台東区、板橋区、練馬区 |
普通 | 墨田区、江東区、品川区、北区 |
うーん | 荒川区、足立区、葛飾区 |
実際の来場者数データはそれぞれの区だけが持っているので、あくまで感覚値だということをご承知おきください。
ちなみに、私は合同説明会に参加したことで志望区がガラッと変わりました。第一志望だった区の説明会がイマイチで、時間が余ったのでたまたま参加した区の説明会に感動しました。結局、事前に考えていた志望3区がすべて変わりました。
合同説明会によって志望区が変わったという人は非常に多いです。開催が1月なのでまだまだ迷いがある時期というのもあるでしょう。
こういったケースもあるので、合同説明会での人気と、申込時点での人気は必ずしも合致しないと言えそうです。
統計から予測する

特別区Ⅰ類 事務の受験者数は毎年10,000~13,000人ほどです(令和2年度はコロナの影響で大幅に減ったので考慮外)。
全員に志望区を聞くことができれば正確な人気区ランキングを作れますが、現実的にそれは難しいところです。
そこで、推計統計学の標本調査を使います。母集団(受験者数)を13,000人とすると、理想的なサンプル数は420~450人程です。
すなわち、特別区Ⅰ類事務の受験生450人に志望区を聞けば、13,000人全員に聞いた場合とほぼ同じ結果が得られるということです。
当サイトの読者は1日で必要サンプル数を優に超えており、特別区志願者がほとんどなので、アンケートによって確度が高い人気区データを皆様にお届けできると思います。
お答え頂いたアンケート結果は後ほどをお伝えする予定です。
ちなみに、以前の調査によると大まかに次のような結果になりました。
人気度 | 区(専願の江戸川区は除く) |
---|---|
大人気 | 文京区、世田谷区、中野区、杉並区 |
人気 | 千代田区、港区、大田区、渋谷区、豊島区、練馬区 |
まあまあ | 中央区、新宿区、台東区、目黒区、板橋区 |
普通 | 墨田区、江東区、品川区、北区 |
うーん | 荒川区、足立区、葛飾区 |
ただし、第一志望ではランク外なのに第二志望では1番人気といったような区もあったため、単純にランク付けするのは危険かもしれません。あくまで参考程度にご覧ください。
ゆかりのある地を選ぶ傾向がある

どんなところか想像もつかないし、興味もない。そんな縁もゆかりも無い区を志望する人はいないでしょう。
志望区として書けるのは3つまでなので、少なくともその内の一つには、何らかのゆかりがある区を選ぶ傾向があります。
たとえば、住んだことがある区、よく遊びに行く区、テレビなどで見聞きして興味を持った区、といったように何らかのポジティブな関りが志望区を決める要因になります。
そうした理由の中でも特に強力なのが、所属している大学の所在地です。
出身大学のキャンパス所在地を志望区3区の一つに入れるケースは極めて多いです。
特別区志願者のボリュームゾーンは、いわゆるMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の文系学部なので、それらのキャンパス所在地と照らし合わせると人気の区が浮かび上がります。
大学 | 区 |
---|---|
明治大学 | 杉並区(世田谷区)、千代田区 中野区 |
青山学院大学 | 渋谷区(港区) |
立教大学 | 豊島区 |
中央大学 | 文京区 |
法政大学 | 新宿区 |
確かに、ほかの調査でも人気が高いと予測されている区が並んでいますね。
たとえば渋谷区役所に青山学院大学や國學院大学の出身者が多いと聞きますが、やはりキャンパスがある区を選ぶ人は多いようです。
長い期間を過ごした土地ですから愛着が湧くのは当然ですし、出身大学が近くにあると何か安心感が生まれます。
少なくとも第三志望以内にキャンパスの所在区を入れるケースが多いようです。
人気区=倍率が高い区 ではない!
さて、様々な角度から人気区を調査してきましたが、1点だけ注意すべきことがあります。
それは、「人気区だからといって倍率が高いわけではない」ということです。
なぜならば、それぞれの区で採用人数が大きく異なるからです。
令和3年度の採用予定人数を見てみましょう。
区 | 採用予定人数 |
---|---|
千代田区 | 14 |
中央区 | 25 |
港区 | 10 |
新宿区 | 24 |
文京区 | 25 |
台東区 | 31 |
墨田区 | 24 |
江東区 | 40 |
品川区 | 39 |
目黒区 | 33 |
大田区 | 112 |
世田谷区 | 67 |
渋谷区 | 33 |
中野区 | 46 |
杉並区 | 54 |
豊島区 | 19 |
北区 | 38 |
荒川区 | 15 |
板橋区 | 41 |
練馬区 | 55 |
足立区 | 58 |
葛飾区 | 40 |
江戸川区 | 26 |
このように、採用人数にかなり幅があります。
たとえば、どの調査でも世田谷区は高い人気でしたが、採用人数が多いので倍率はそこまで高くはないかもしれません。
一方で、文京区は世田谷区と並んで高い人気を誇りますが、採用人数は世田谷区の半分以下です。つまり、非常に高い倍率であると予想されます。
それを裏付けるデータとして、採用予定人数と実際の採用人数の乖離があります。令和元年度のⅠ類事務入区実績が公表されている区のみ抽出しました。
区 | 予定 | 実績 |
---|---|---|
新宿 | 35 | 45 |
文京 | 30 | 38 |
台東 | 42 | 48 |
世田谷 | 128 | 125 |
北 | 37 | 51 |
板橋 | 49 | 53 |
練馬 | 87 | 78 |
江戸川 | 50 | 56 |
これを見ると、世田谷区と練馬区は予定人数を採用することができなかったと読み取れます。
通常、辞退者を想定して余裕をもった採用を行いますので、予定人数を割るのは珍しいことです。
何かしらの事情があったのかもしれませんが、データだけ見ると予定人数を割るほど倍率が低かったと推測できます。
一方で、予定人数を割ってでも、本当に優秀な人材しか採用しないという方針があるのかもしれません。
区ごとの倍率と受かりやすい区はどこか?
受験生にとって一番気になるのはやはり倍率だと思います。
そこで、これまでの調査を総合し、昨年度の実績から区ごとの倍率(難易度)を割り出しました。
倍率は大きく変化することは無いので、これが令和3年度の区面接予想倍率になります。
区 | 採用予定人数(R2) | 人気度 | 予想倍率(難易度) |
---|---|---|---|
千代田区 | 20 | S | 5.5 |
中央区 | 18 | B | 3.9 |
港区 | 23 | A | 3.9 |
新宿区 | 29 | B | 2.4 |
文京区 | 33 | S | 3.3 |
台東区 | 31 | B | 2.3 |
墨田区 | 25 | C | 2.0 |
江東区 | 36 | C | 1.4 |
品川区 | 40 | C | 1.3 |
目黒区 | 37 | B | 1.9 |
大田区 | 96 | A | 0.9 |
世田谷区 | 80 | S | 1.4 |
渋谷区 | 36 | A | 2.5 |
中野区 | 43 | S | 2.6 |
杉並区 | 48 | S | 2.3 |
豊島区 | 18 | A | 5.0 |
北区 | 35 | C | 1.4 |
荒川区 | 15 | D | 2.0 |
板橋区 | 60 | B | 1.2 |
練馬区 | 55 | A | 1.6 |
足立区 | 50 | D | 0.6 |
葛飾区 | 42 | D | 0.7 |
江戸川区 | 25 | C | 2.0 |
人気度列:SABCDの順で人気が高いとする。
R2年度のⅠ類事務の最終合格者数は1,741人。
よってS=110人、A=90人、B=70人、C=50人、D=30人の志願者がいるとして重み付けを行うと、計1,690人となり、組合を含めた実際の最終合格者数と近似する。
その後、予想志願者数を採用予定人数で割ることで、予想倍率を算出した。
あくまで予測ですが、この倍率は実感値としてしっくりくる方も多いと思いますので、参考としての価値は高いと考えます。
まとめ
志望区の人気度や倍率は非常に気になる要素ですが、特別区は公表していません。
やはり、特定の区への人気集中などを防ぎたいのだと思います。
ただ、受験生にとって将来を左右する重要な要素ですので、この記事が少しでも手掛かりになれたなら幸いです。
ひとつ確実にいえるのは、人気度や倍率を気にせず、本当にあなたが働きたい区を選ぶべきだということです。長い間はたらくことになる街なので、妥協せず、仮に難易度が高そうだと感じても全力で合格を勝ち取ってください!
それでは、あなたの合格と幸せな未来を願っています!