論文の試験では「論文ルール」を守って書かなければ減点されてしまいます。
とくに特別区は受験者数が多いので、少しの減点だけで何人もの差が付いてしまいます。
上位合格者から順に希望区への挑戦権が得られる仕組みなので、もったいない減点はできるだけなくしたいことろですよね。
そこで今回は、試験官の採点基準をもとに、減点されない正しい論文の書き方について解説していきます!
特別区の論文は、趣旨を押さえることが大事
論文を書くうえで最も重要なのが「趣旨の把握」です。
いかに素晴らしい論文でも、問われている趣旨から外れた内容を論じていたならば、文字通り論外になります。
これをやってしまうと、一発アウトです!
実は、優秀な受験生でも論文の趣旨をはき違えてしまい破滅する例が後を絶たちません。
というのも、特別区の論文試験は問題文が他の自治体と比してやや長いので、どこが趣旨なのか把握しづらいという事情があります。
しかし、あるコツさえ把握すれば趣旨を外すことは完全に無くなります。
過去の論文課題を例に解説します。
東京都では昨年、転出者数が転入者数を上回る月が続きました。転出超過等によって人口が減少すると、税収の減少や地域コミュニティの衰退など様々な問題をもたらします。
試験問題及び正答の公表|特別区人事・厚生事務組合(https://www.union.tokyo23city.lg.jp/jinji/jinjiiinkaitop/shiryo/shikemmondai/index.html)
また一方で、特別区の抱える公共施設の多くが老朽化しており、人口減少がもたらす更なる社会変化に対応した、施設の企画・管理・利活用が求められています。
このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。
試験問題及び正答の公表|特別区人事・厚生事務組合(https://www.union.tokyo23city.lg.jp/jinji/jinjiiinkaitop/shiryo/shikemmondai/index.html)
このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
見てのとおり、特別区は論文の出題文がとても長いです。
大きく分けて3つのパーツに分かれています。
つまり、次の3段構成になっていることがわかります。
① 東京都(特別区)の状況
② ①の状況がもたらす特別区への課題・重要事項
③ ②の課題に対して特別区の職員としてどのように取り組むべきか?
もう一方の出題テーマについても見てみましょう。
このように、同じ構成です。
つまり、特別区の状況 → 課題・重要事項 → それに対して特別区の職員としてどのように取り組むべきか?という流れになっています。
毎年度同じ構成です!
長い問題文ですが、注目すべきは「③特別区の職員としてどのように取り組むべきか?」の部分です。
結局はこの最終行の内容が問われており、この問いかけに対して論文を書けばいいのです。
つまり、
「このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」
もしくは
「このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」
の部分です。ここが問われています。
多くの受験生はつい前半部分に気を取られてしまいがちです。
そうなると「地域コミュニティの活性化」について論じたり「SDGsそのもの」について論じてしまう受験生もでてきます。
しかしこれは明確に間違いです。
出題趣旨からズレているので一発不合格になりかねません!
問われているのは最終行にある通り「区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方」もしくは「ごみの縮減と資源リサイクルの推進」です。
特別区は受験生のためにわざわざ問題文で状況説明をしてくれていますが、逆に受験生を惑わせてしまっているのが実情です。
問題文の前半はあくまで状況説明です。後ほど解説しますが、序論に活かすのが正しい使い方です。
問題の趣旨、つまり解答すべき内容は最終行のみだということを肝に銘じてください!
対策としては、「問題文の最終行を丸で囲む」ことがオススメです!
丸で囲むことによって、余計な部分に気を取られずに正しく「問い」を把握することができます。
「特別区の職員として」論文を書くことを意識する
特別区論文試験の問題文は必ず「特別区の職員としてどのように取り組むべきか」という一文があります。
つまり、「特別区の職員目線」で書くことが明記されています。
したがって、特別区の職員の目線で書いていない、特別区職員にはできないことを書いてしまった場合、減点対象になります。
例えば、課題解決策として法改正を挙げてしまうと、不合格になります。
特別区職員は法律や憲法を改正することができないからです。
その他にありがちなのが、「許認可の基準を下げる」、「補助金の交付」という解決策を挙げてしまうことです。
たしかに実際の現場では許認可基準の見直しや補助金の交付を行うこともありますが、論文試験の解決策としては好まれません。
なぜならば、「アイディア」がみられないからです。
特別区の職員ではなくとも誰でも思い付くような内容は、点数にはなりません。
また、許認可基準の変更や補助金による解決は最終手段であり、通常はもっとソフトな解決策が望まれます。
特に好まれるのが、「協働」です。
これは重要なワードですのでぜひ覚えておいてください!
住民との協力や、企業・大学の橋渡しなど、職員の積極的なコミュニケーションによる課題解決が大変好まれます。
「いやいや、お金による解決のほうが確実で有効じゃないか」と思うかもしれません。
しかし、学術論文や意見論文ではなく、あくまで試験ですので受験生らしい若干青臭いような解答の方が高得点になる傾向があります。
特別区の論文ルールを守る
減点のほとんどは論文の書き方のルールが守られていないことです。
優秀な受験生でも減点が積み重なり不合格になってしまうケースもしばしばあります。
知ってさえいれば減点ゼロにできるものばかりですので、必ずすべて押さえておきましょう。
字数過不足
指定された字数の超過、不足はその場で不合格になります。採点官からすれば最も分かりやすいのである意味ありがたい基準です。
特別区採用試験の論文問題には「字数は 1,000 字以上 1,500 字程度です。」と記載されています。
したがって、1000字未満、1500字より多い文字数は一発不合格です。これは絶対に注意してください。
では、どの程度の文字数が適切なのかというと、最大字数の8割以上、つまり1200字以上書くことが推奨されています。
これは、趣旨に沿った論文を不足なく十分に書ききった場合、少なくとも1200字は使うはずだという意味です。
1200字に満たないから減点される、ということはありませんが、どこかで内容が不十分だったり書き洩らしがあると考えられます。
したがって、結果的にその部分で減点されることになります。
実際に書いてみて1200字に満たない場合は、急いで内容を見返す必要があります。
ただし、終了時間が迫っている場合は無暗に修正するのではなく、誤字脱字のチェックを行った方が安全です。
誤字脱字、言葉遣い
これも採点官にとっては分かりやすい減点基準です。
誤字脱字1つにつき何点マイナスといった基準があり、優秀な受験生でもつい何点か落としてしまいがちです。
あまりにもったいないミスですので、なんとしても減点ゼロを目指しましょう。
よくある間違いについてまとめましたので、ご覧ください。
【 誤字・脱字 】
- (×)確立 → (○)確率 ※パーセンテージのことを指す場合
- (×)完壁 → (○)完璧
- (×)革進 → (○)革新
- (×)廃除 → (○)排除 ※廃除は法律用語のみ
- (×)不可決 → (○)不可欠
- (×)保管関係 → (○)補完関係
- (×)特長 → (○)特徴 ※「特長」は目立った長所という意味。
- (×)適格 → (○)的確、適確 ※「適格」は資格を満たすという意味。
- (×)低抗 → (○)抵抗
- (×)連形 → (○)連携
- (×)初める → (○)始める
- (△)シュミレーション→ (○)シミュレーション
- (△)コンピュータ→ (○)コンピューター
- 「追及」は相手の責任などを問う、「追求」は追い求める。例)安全性の追求
【論文らしい表現】
論文・レポートらしい表現が最も参考になります。
「とても」は「きわめて」にする、「思う」は「である」「考えられる」にする等。
【漢字が分からない場合】
たとえば、形骸化の「がい」の字が分からない場合、形がい化と書いてしまうと減点。熟語全体を漢字で書けないときは、形式化など別の表現に置き換えること。
【敬称は必要ない】
- (×)区民の方 → (○)区民
- (×)区長様 → (○)区長
- (×)議員様 → (○)議員
論文の作法を守っていない
論文にはいくつかの作法があります。
したがって、これを守らないと減点対象になってしまいます。
以下に論文の作法をまとめました。少し多いですが、論文をいくつか書けばすぐに慣れるはずです。
字が汚い
読めないような文字が1つでもあれば大幅減点の恐れがあります。また、細かい漢字を書くときに、どこかの画が潰れてしまうことで減点されることもありえます。
たとえば、衤(ころもへん)の画が1つ潰れてしまうケースはよくあります。
また、書き方が曖昧な漢字をわざと雑に書いて誤魔化す人もいますが、これは絶対にやめてください。誤字として認識されて減点になります。
文字のきれいさは主観的なものなので、読めさえすれば減点はされません。
しかし、きれいな文字であれば文章に説得力が増すという心理学の事実があります。
同じような内容を書いたとしても文字がきれいな方が加点される可能性が高いです。
文字の綺麗さは一朝一夕でどうにかなるものではありませんので、普段からできるだけ丁寧な字を心がけてみてください。
文体が統一されていない
文体には大きく分けて「です・ます調」(敬体)と「だ・である調」(常体)があります。論文では「です・ます調」(敬体)は好まれないので「だ・である調」(常体)を使ってください。
もし敬体と常体を混在してしまった場合は大きく減点されてしまうので注意が必要です。
特別区の論文まとめ
何度言っても足りないくらいですが、論文は最重要科目です。論文の出来次第で合否が決まります。順位が決まります。将来が決まります。
そのため、模範解答集などで着実に対策する方法がおすすめです。
使うも使わないも、あなた次第ではありますが、手探りで論文対策するよりも確実だと思います。
絶対に避けては通れない科目なので、全力をかけて対策してください!
それでは、あなたの合格と幸せな未来を願っています!