「特別区の年収っていくらなんだろう?」
「年収」は就職先選びのもっとも重要な要素の一つです。
はたらく理由のひとつが「お金を稼ぐため」なので、高ければ高いほど嬉しいですよね!
では、特別区の年収は一体いくらなのでしょうか?
結論から言うと、区によって年収は大きく異なります。
たとえば文京区と渋谷区の年収は異なりますし、足立区と板橋区の年収も異なります。
したがって、「特別区の年収」という大雑把なものは存在しませんし、算出できません。

もし「特別区の年収」と名乗るデータがあった場合、根拠の無い情報なので注意が必要です
正しくは、「千代田区役所の年収」「世田谷区役所の年収」といった形でしか算出できません。
そこで今回は、職場選びのもっとも重要な要素のひとつである「年収」について、最新データをもとに算出し、特別区の間で比較をしたいと思います!
23区年収ランキング

さっそくですが、こちらが23区の年収ランキングです!
比較のために、上場企業平均年収(出典:東京商工リサーチ)も載せています。
区によってバラツキはありますが、特別区は全体的にかなり優良だといえます。
上場企業平均よりもはるかに高い区ばかりです!
しかも、ここに載せている特別区の最新のデータは令和3年度のものです。
実は、令和4年度に特別区の給与改定がされたことにより、特別区職員の給与がアップすることになりました(令和4年職員の給与等に関する報告及び勧告)!
ですので、現在はこれより更に年収がアップしている状況です!
民間企業とは違い、良くも悪くも外的要因にほとんど左右されないのが公務員組織です。
したがって、あなたが入区した後も、おおよそこの平均年収で安定するとみてよいでしょう。
また特別区の年収は、他の地方自治体と比べるとかなり高額です。
その理由に「地域手当」があります。
地域手当とは、都市部など物価の高い地域の公務員に対して支給される手当です。
特別区職員はこの地域手当が毎月支給されます。
特別区職員は「日本で最も物価が高い都市部の職員」という扱いなので、最大値の地域手当が支給されます!これが他の自治体の公務員と圧倒的な差になります。
このように、職員になってからの生活を考えると年収も申し分ありませんし、引っ越しを伴う転勤もありませんので、かなり安定した将来設計を立てることができます。
その点で、特別区職員はたいへん魅力的な職業です!
なぜ年収に差が出るのか?

特別区職員の給料は原則、23区同じ基準に従っています。
したがって、杉並区だろうが板橋区だろうが、同じ役職で同じ号給(ほぼ経験年数と同義)であれば、同じ給料になります。
ではなぜこんなにも年収が違うのでしょうか?
それは、以下の要因が考えられます。
残業時間に差がある
平均年収には基本給だけではなく、残業代や扶養手当といった各種手当も含まれます。したがって、残業時間が長い区ほど平均年収も上昇します。
わかりやすいように、台東区(約693万円)との葛飾区(約645万円)を比較してみましょう。
こちらでも解説しましたが、台東区の月平均残業時間は14時間、墨田区は6.4時間です。
年にして約91時間もの差があります。
当然その分、台東区に残業手当が支給されるので年収も上昇します。
このように、残業時間の長さが年収を左右する要素の一つになっているのです。
残業してでも高い年収を得たいかどうかが希望区選びのポイントになりそうです。
役職比率に差がある
当然ですが、役職が高ければ高いほど年収は上がります。
したがって、役職が高い職員が多い区ほど平均年収は上昇します。
特別区職員一般行政職の役職は、以下の通りです。

一番下が1級職(係員)、昇任すると主任(2級職)、さらに昇任すると係長・・・といったようになり、最上級が部長になります。
中にはそれ以上昇任する人もいますが、相当レアなので各区のデータには載っていません。
では実際に、役職比率が年収に及ぼす影響を見ていきましょう。
たとえば品川区と目黒区では、品川区のほうが残業時間が多いにもかかわらず、目黒区の年収のほうが高いです。
品川区 | 目黒区 | |
---|---|---|
月平均残業時間 | 12.2 時間 | 11.5 時間 |
平均年収 | 約 676 万円 | 約 682 万円 |
次に、2つの区の役職比率を見てみましょう。
係員 | 主任 | 係長・主査 | 課長補佐 | 課長 | 部長 | |
---|---|---|---|---|---|---|
品川区 | 41.5% | 24.7% | 20.5% | 7.9% | 3.8% | 1.5% |
目黒区 | 39.8% | 27.8% | 21.4% | 5.0% | 4.8% | 1.2% |
この通り、目黒区の方が上位の役職比率が高いことが分かります。
したがって、「上位職の職員が多いから平均年収も高い」といえます。
では、なぜ目黒区には上級職が多いのでしょうか?
原因として「昇格のしやすさ」と「職員年齢の高さ」の2点が考えられます。
昇格のしやすさ
まず昇格のしやすさについて見てみましょう。
特別区の職員は、次の役職に昇格するために昇任試験を受けなければなりません。
この昇任試験は特別区全体で統一した基準で行われますが、実施と合否判断は各区が行います。
したがって、区によって合格者の数に差が出ます。
それを裏付けるデータとして「昇給率」というものが存在します。(各区の昇給率についてはこちら)
「昇給率」とは、勤務成績が良好であるため通常よりも高い人事評価をされた人の割合です。
普通に働くだけでも給料は年々上がっていきますが、勤務成績が良好だと判断された人は「昇給」という名目でさらに給料が上がります。
「昇給」した職員が多ければその区の「昇給率」は上がります。
品川区のデータは公表されていないので目黒区とは比較できませんが、もしかすると目黒区のほうが「昇給率」が高いのかもしれません(目黒区の一般職員は24.1%)。
ちなみに昇給率は区によって大きく異なります。
たとえば墨田区の昇給率は例年、驚異の40%超えです!
率直に言って、昇給による給料の上げ幅は微々たるものですが「昇給」が早いほど「昇格」も早いので、管理職を狙う方は特に勤務成績を意識して仕事にあたる必要があります。
年齢が高い職員が多い
公務員組織はまだまだ年功序列です。
年功序列ということは、職員の年齢が高いほど年収が上がり、高い役職につきやすいということです。
では、先ほど例に挙げた品川区と目黒区を、次は職員の年齢構成という面から比較してみましょう。
31歳以下の構成を比べると、なんと約10 %も開きがあります。
平均年収 | 31歳以下 | |
---|---|---|
品川区 | 約 676 万 | 35.1% |
目黒区 | 約 682 万 | 25.4% |
このことから、目黒区の方が年長者が多いため、年功序列に従い上級職の職員も多いということが考えられます。
ついつい平均年収が高い自治体に行きたいと思ってしまいますが、実は年長者が年収を押し上げており、若者はあまり貰えていないというケースがあるかもしれません。
特に若い職員が多い職場ではたらきたい場合は、平均年収に惑わされないよう注意が必要です。
お金持ちの区だからといって職員の年収が高いわけではない

おもしろいのが、区の財政状況と年収には相関がないことです。
港区は特別区のなかでもダントツで財政が豊かですが、23区の中では年収は低めです。
これは、特別区の給料体系が同じだということが原因です。
いくら財政が豊かだといっても、それを職員に分け与えることは許されません。
統一したルールにのっとって適正な給料を支払う必要があります。
民間企業であれば利益をあげた分だけ社員に還元することは許されます。
しかし、公務員の場合はそうはいきません。
公務員の給料は組織が稼いだ利益ではなく、住民の税金から支払われているからです。
また、良くも悪くも23区は共同体のような面もあります。
都区財政調整制度というものがあり、大雑把にいってしまえば東京都がいったん23区の収入の一部を預かり、23区に再分配する制度です。
23区間での財政格差を減らそうという狙いがあります。
こうした都区財政調整制度や特別区人事委員会といった組織の存在もあり、特別区は独立した自治体といえども同じルールにのっとって運営しなければならない面もあります。
ですので、財政と年収には相関がないのです。
まとめ
今回の記事は、気になる方は多いはずなのに、しっかりとした調査がなされていない年収について算出しました!
ただ単に年収を出すのではなく、分析・考察することで区職員のリアルな実態が見えてきましたと思います。
特別区は全自治体のなかでもトップクラスの年収なので、非常に魅力的な就職先です。
それだけに人気の自治体ですが、合格を勝ち取れば素晴らしい生活が待っているといえます。
ただし、特別区に合格するためには論文・面接を避けては通れません。
なぜならば、特別区は論文・面接の配点が異常に高いことで知られているからです。

この通り、教養・専門の点数がどれだけあっても簡単に逆転が起こります。
したがって、特別区に特化した論文・面接対策を取ることが非常に重要です。万全の対策をして、確実に合格を掴みましょう!