特別区はその名の通り、ふつうの自治体とはちょっと違った特別な自治体です!
過去の特別区の試験では、ふつうの自治体との違いが出題されたことがありますので、受験生はぜひとも押さえておきたいところです!
そこで今回は、「特別区の基礎知識」と「ふつうの自治体との違い」について徹底解説していきます。
これを読んで他の受験生と差をつけましょう!
特別区の概要
特別区は、全国都道府県の中で東京都にだけにある基礎自治体です。
※基礎自治体とは行政区画のなかで最小の単位の自治体のこと。住民と最も近い。
ふつう、基礎自治体といえば市町村ですが、東京都にだけ「特別区」という基礎自治体が存在します。
特別区に該当するのは東京23区とよばれる23個の自治体です。
- 千代田区
- 中央区
- 港区
- 新宿区
- 文教区
- 台東区
- 墨田区
- 江東区
- 品川区
- 目黒区
- 大田区
- 世田谷区
- 渋谷区
- 中野区
- 杉並区
- 豊島区
- 北区
- 荒川区
- 板橋区
- 練馬区
- 足立区
- 葛飾区
- 江戸川区
23区は東京都の中心的な基礎自治体なので、神奈川県に対する横浜市、愛知県に対する名古屋市のようなものだと思ってください。
ちなみに23区はそれぞれまったく別の自治体ですが、どこの区の職員になるにしても「特別区職員採用試験」に合格する必要があります。
「特別区職員採用試験」に合格した後に、千代田区、港区など各区個別の試験を受け、合格後に採用内定となります。
つまり、特別区職員採用試験に合格したとしても、就職できるのは23区のうち1区だけです。
採用試験については以下の記事で詳しく解説しますので、ご覧ください。
場所
まずは特別区の地理について見ていきましょう。
下図が、東京都全体を表したイラストです。
左側のピンク色の部分が東京都の市町村部、いわゆる多摩地域ですね。
下の青部分が小笠原諸島などの島しょ部です。
そして右側の黄色い部分が特別区です。

このように、東京都は「区部」「市町村部」「島しょ部」の大きく三つに分けることができます。

ちなみに東京都庁の職員は、特別区だけではなく、市町村部、島しょ部も管轄範囲・転勤範囲になります!
さて、見ていただければ分かる通り、東京都の面積の半分以上は市町村です!
特別区が占める面積は東京都全体のおよそ28.6%しかありません。
東京といえば中心部である23区ばかり目立ちますが、実際の面積では意外と23区は小さいのです。
では、特別区だけをさらに拡大してみてみましょう。

これが特別区の全体図です。小さい頃から東京に住んでいるという方でも、意外とじっくりとみる機会はなかったかもしれません。
ざっと見てみると、いわゆる下町といわれている地域が北部に多く、大企業や政府主要機関が南部に多い傾向があります。
データでみる特別区
東京都の人口は約1,387万人で、そのうち約960万人が23区内に住んでいます。(東京都の統計より、令和5年4月1日現在)。
これはスイスやフィンランドといった国の人口を上回ります!
また、東京都の人口の約7割が23区内に住んでいることになります。

面積は約3割なのに、人口の約7割が特別区に集中しているのがポイントです
一国の人口よりも多くの人々がこの小さな地域に集まっています。それだけ人々を惹きつける魅力的な都市であり、エネルギーに満ちているといえます。
また、歳入は23区合計でを4兆を軽く超えます(東京都特別区普通会計決算の概要|東京都より)。これも大抵の途上国の国家予算をはるかに上回る額です。
このように、特別区は他の自治体と比べても規格外の大都市だということが分かります。
日本の中でもダントツにパワーがある地域なので、この上なくやりがいのある自治体です。
では続いて、各区の基礎データを見ていきましょう。
面積
面積は区によって大きく異なります。
地域 | 面積(km2) |
---|---|
千代田区 | 11.66 |
中央区 | 10.21 |
港区 | 20.37 |
新宿区 | 18.22 |
文京区 | 11.29 |
台東区 | 10.11 |
墨田区 | 13.77 |
江東区 | 43.01 |
品川区 | 22.84 |
目黒区 | 14.67 |
大田区 | 61.86 |
世田谷区 | 58.05 |
渋谷区 | 15.11 |
中野区 | 15.59 |
杉並区 | 34.06 |
豊島区 | 13.01 |
北区 | 20.61 |
荒川区 | 10.16 |
板橋区 | 32.22 |
練馬区 | 48.08 |
足立区 | 53.25 |
葛飾区 | 34.80 |
江戸川区 | 49.90 |
台東区や中央区、千代田区はたったの10km2しかありません。
一方で大田区や世田谷区、足立区はその6倍近くの面積を持ちます。
同じ23区でも、面積は大きく違うのが面白いですね!
人口
人口も区ごとにかなりの差があります(令和5年度4月1日現在 東京都特別区普通会計決算の概要|東京都https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/juukim/jm-index.htm)。

最も少ないのが千代田区の約6. 8万人。これは特別区の中でもダントツで少ない人口です。
最も多いのが世田谷区の約91. 7万人。これは、政令指定都市である静岡市や相模原市よりも多い人口です。
ちなみに政令指定都市になるには人口50万人以上必要ですが、ご覧いただいた通り、特別区の中には50万人を上回る人口の区がいくつもあります!(とはいえ特別区は市ではないので、政令指定都市になることはできません・・・)

23区はそれほど巨大な自治体の集まりなんです!
人口は自治体の命とも言うべき指標なので、希望する区の人口がどの程度か、把握しておきましょう。
財政

一口に特別区といっても、各区で区政状況はかなり異なることが分かります。
例えば千代田区は面積も人口も少ないですが、自主財源比率は非常に高いです。
特別区のような基礎自治体の主要財源は住民税と所得税です。
したがって、人口が少ないにも関わらず歳入が多いということは、千代田区には高額所得者が数多く住んでいることが分かります。
このように豊かな区がある一方、そうでない区も存在します。23区間の格差は非常に大きいのです。
ただ、後述するとおり、特別区には「都区財政調整制度」というものが存在します。これは、23区間で財政調整を行い格差を穏やかにするための制度です。
都区財政調整制度によって、財政が厳しい特別区でも安定的に行政サービスを提供し続けることができるのです。
財政的な格差があるとはいえ、特別区は各区が切磋琢磨してよりよい自治体を目指す文化があります。
どの区も他には無い魅力があるので、財政や人口の大小に関わらず、あなたが気に入った区を希望するのがベストです。当サイトでは希望区選びに役立つ情報を取り揃えていますので、ぜひご参照ください。
他の自治体と特別区の違い
難しい言い方をすると、特別区は「特別地方公共団体」です。
一般的な市町村は「普通地方公共団体」ですが、いろいろな面で「普通」ではないので、「特別」地方公共団体に指定されています。
では、どんなところが「普通」じゃないのか? 主にこんなものがあります。
- 上下水道の管理は都が行っている。(ふつうは基礎自治体が行う)
- 消防の管理は都が行っている。(ふつうは基礎自治体が行う)
- 都区財政調整制度により、23区間で財源の調整が行われる。
上下水道の管理や消防は、23区各自が行うよりも都が一括して行うほうが効率がいい、さらに、大都市行政の一体性及び統一性を確保するために東京都が管轄しています。
したがって、特別区は上下水道・消防組織を持っていません。
23区はそれぞれ比較的ちいさな自治体なので、たしかに効率的ですね。
また、23区には財政格差を是正するために、都区財政調整制度というものがあります。

これはとても重要ですのでぜひ覚えてください!
都区財政調整制度は、「都区間の財源配分」、「特別区相互間の財源調整」を行う制度です。
基本的なしくみを解説します。
ふつうの自治体は「固定資産税」、「市町村民税法人分」、「特別土地保有税」が市町村税としてその自治体に納められます。
しかし東京では、それら3つの税が特別区ではなく東京都に納められています。
そして東京都はこれら3つの税をベースの財源として、各特別区の財政需要に応じて「特別区財政調整交付金」を交付しています。
つまり、ざっくりいうと「本来特別区に入るはずの3つの税金が東京都に納められ、その後、東京都は各特別区の財政需要に応じて分配する」という仕組みです。
なぜこのような仕組みがあるかというと、主に23区の財政格差を是正する狙いがあります。
23区は財政格差がとても大きいことが問題になっており、おもに北部に貧しい区が多く、南部に裕福な区が多い状況です。

23区版の南北問題ともいえます!
たとえば港区は非常に財政が豊かな自治体なので、「特別区財政調整交付金」を例年もらっていません。自身の税収だけで十分に財政需要をまかなえるからです。ちなみに渋谷区もほとんどもらっていません。
一方、北部を中心に「特別区財政調整交付金」に依存している特別区もいくつかあります。
普通の県や市町村では許されないような都区財政調整制度ですが、23区は多くの人や企業が集積する大都市ということ、財政格差が極めて大きいことからこのような制度が取られています。
以上にように、普通の地方公共団体にはない制度が特別区にはあります。
面接で「普通地方公共団体との違いはなにか?」を聞かれた事例もありますので、概要程度は把握しておいた方が安心です。
政令指定都市にも〇〇区があるけど、特別区とは違うの?
さいたま市大宮区、川崎市幸区、横浜市緑区など、政令指定都市にも〇〇区があります。
実はこれ、名前こそ似ていますが特別区とは全く別モノです!
次の図をご覧ください。

特別区は市町村と同じく基礎的な自治体です。
したがって、首長がいますし、議会もあります。条例の制定権もあります。先に書いた、消防や上下水道をもっていないだけで、普通の市と同列の自治体です。
一方で、政令指定都市にみられる、〇〇区は基礎自治体ではありません。
政令指定都市は広すぎるため、区という単位に分割することで行政サービスを行き渡らせようとしているというだけです。ちなみに政令指定都市の区は正式には「行政区」と呼ばれており、東京都の「特別区」とは明確に区別されています。
たまたま特別区も政令指定都市も「〇〇区」というネーミングを使っていますが、実態は全く別物なので注意してください!
魅力的な大都市、特別区
特別区にはそれぞれの区が、時に協力し、時に競争して共に繁栄していくという文化があります。
どの区にも独特の魅力があり、伝統を守りつつも新しいことにも積極的に挑戦するという意気込みがあります。一流企業から転職してきた方でさえ口を揃えてやりがいを感じると話すほどです。
転勤リスクもなく、福利厚生も充実しています。ぜひ挑戦してみてください!
ただし、特別区に合格するためには論文・面接を避けては通れません。
なぜならば、特別区は論文・面接の配点が異常に高いことで知られているからです。

この通り、教養・専門の点数がどれだけあっても簡単に逆転が起こります。
したがって、特別区に特化した論文・面接対策を取ることが非常に重要です。万全の対策をして、確実に合格を掴みましょう!