特別区(東京23区)のⅠ類(大卒程度)採用試験には、「早期SPI枠」「春試験」「秋試験」の3つのルートがあります。名前は似ていますが、受けられる区分も、試験の中身も、併願のルールもまったく違います。
この記事では、令和8年度(2026年度)の試験案内をもとに3つのルートの違いを整理し、自分はどれを受けるべきかを判断できるようにまとめます。
結論:事務志望なら「早期SPI枠」か「春試験」のどちらか1つ。技術系なら「春試験」と「秋試験」の2回チャンスがあります。
3つのルートの違いを一覧で比較
| 早期SPI枠 | 春試験 | 秋試験 | |
|---|---|---|---|
| 受けられる区分 | 事務(一般事務)のみ | 事務・技術系・福祉・心理・衛生監視・保健師など | 技術系のみ(土木・造園・建築・機械・電気) |
| 受験できる年齢 | 22~31歳(大卒見込みなら21歳以下も可) | 同左 | 21~31歳(大学3年生にあたる年齢から) |
| 第1次試験 | SPI3(テストセンター) | 教養試験・専門試験・論文など | 専門試験のみ |
| 第2次試験 | プレゼンテーションシート作成+口述試験 | 口述試験(個別面接) | 口述試験(個別面接) |
| 第1次試験の時期 | 3月 | 4月 | 9月 |
| 最終合格の発表 | 5月下旬 | 7月中旬~下旬 | 11月下旬 |
| 採用予定数(事務) | 191名程度 | 1,039名程度 | ― |
| 倍率(事務) | 4.1倍 | 2.5倍 | ― |
| 名簿の有効期間 | 原則1年 | 原則1年 | 原則2年 |
※令和8年度の試験案内・実施状況をもとに作成。倍率は第1次試験の受験者数÷最終合格者数です。年齢は採用予定日(令和9年4月1日)時点。
早期SPI枠とは
早期SPI枠は、民間企業の就職活動で使われるSPI3で第1次試験を受ける区分です。教養試験・専門試験・論文といった、いわゆる公務員試験の勉強がいりません。対象は事務(一般事務)だけで、令和8年度の採用予定は191名程度でした。
第1次試験:SPI3-U(テストセンター方式)
- 性格検査(約30分):自宅などのパソコンかスマートフォンで受けます。合否には関係しません。
- 基礎能力検査(約35分):言語分野と非言語分野。テストセンター(リアル会場かオンライン会場)で受けます。
- 受験日:期間(令和8年度は3月4日~17日)の中から自分で選べます。
第2次試験:プレゼンテーションシート作成と口述試験
第2次試験は2段階です。
- プレゼンテーションシートの作成(1時間30分):課題式で1題必須。提示された資料をもとに、A4用紙1枚に形式自由でまとめます。令和8年度は4月19日(春試験の第1次と同じ日)でした。
- 口述試験:作成したプレゼンテーションシートと面接カードにもとづく個別面接です。面接の冒頭で、シートを使ってプレゼンテーションを行います。
検索では「3分プレゼン」という言葉もよく見かけますが、令和8年度の試験案内にはプレゼンの時間は書かれていません。時間は当日の指示に従う前提で、短い時間でも要点を伝えられるように準備しておきましょう。
早期SPI枠の倍率
| 年度 | 採用予定数 | 最終合格者数 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 191名程度 | 490名 | 4.1倍 |
| 令和7年度 | 113名 | 309名 | 5.6倍 |
採用予定数が増えたことで倍率は下がりましたが、それでも春試験の事務(2.5倍)より高めです。SPIは誰でも受けやすいぶん、民間企業と併願する学生も多く受験します。
春試験とは
春試験は、これまでの特別区Ⅰ類採用試験の流れをくむ、受験者が最も多い試験です。事務のほか、技術系・福祉・心理・衛生監視・保健師など、ほぼすべての区分があります。
- 第1次試験(令和8年度は4月19日):事務は教養試験・専門試験・論文
- 第2次試験(令和8年度は6月29日~7月10日のうち指定日):個別面接
- 令和8年度の事務の結果:採用予定1,039名程度、第1次受験者5,919名、最終合格者2,363名で、倍率は2.5倍(令和7年度は2.4倍)
試験の中身と対策は特別区Ⅰ類採用試験(事務)の日程・試験内容・倍率と対策、論文は特別区の論文対策方法で詳しく解説しています。
秋試験とは
秋試験は、技術系の人材を確保するための試験です。令和8年度は土木・造園・建築・機械・電気の5区分で、造園が新しく加わりました。
- 第1次試験(令和8年度は9月13日):専門試験のみ(1時間30分、記述式・語群選択式など、6題中4題を選んで解答)。教養試験や論文はありません。
- 第2次試験(令和8年度は11月9日):個別面接
- 受験できる年齢:大学3年生にあたる21歳から受けられます。21歳で受けた人は2年後の4月(令和10年4月)、22歳以上の人は翌年4月(令和9年4月)の採用です。
- 採用予定(令和9~10年度):土木24名、造園8名、建築40名、機械25名、電気22名程度
- 名簿の有効期間:原則2年
技術系の各区分の詳しい内容は、土木・造園職、建築職、機械職、電気職の記事をご覧ください。
併願のルール(ここが一番の注意点)
3つのルートを自由に組み合わせられるわけではありません。試験案内とQ&Aでは、次のように決められています。
- 早期SPI枠に申し込むと、同じ年度の春試験には申し込めません(受験したかどうかに関係なく)。
- 早期SPI枠や春試験に申し込んだ人も、秋試験には申し込めます。ただし、早期SPI枠か春試験で最終合格した人は秋試験に申し込めません。
- Ⅰ類と経験者採用は、同じ年度に併願できません。
- Ⅲ類に申し込んだ人は、同じ年度のⅠ類秋試験に申し込めません。
- 前年度以前のⅠ類の採用候補者名簿に載っている人は、受験できません(受けるには先に名簿から削除する手続きが必要です)。
Ⅲ類(高卒程度)の試験については、特別区Ⅲ類採用試験の内容・倍率・日程をご覧ください。
特に大事なのが1つ目です。事務には秋試験がないので、早期SPI枠を選んだ人はその年の事務の受験チャンスが1回だけになります。早期SPI枠で不合格だった場合、同じ年度に春試験を受け直すことはできません。
自分はどれを受けるべき?タイプ別の選び方
事務志望の場合
- 早期SPI枠が向いている人:民間企業の就職活動と並行していて、公務員試験の勉強に時間をかけられない人。SPIの対策に慣れていて、プレゼンや面接に自信がある人。
- 春試験が向いている人:教養・専門・論文の勉強を進めてきた人。倍率の低いほう(令和8年度は2.5倍)で勝負したい人。
迷ったら、倍率と準備状況で決めるのが現実的です。公務員試験の勉強がある程度進んでいるなら、倍率の低い春試験のほうが有利です。逆に、勉強を始めていない段階で特別区を受けたいなら、早期SPI枠が入口になります。
技術系志望の場合
技術系は春試験と秋試験の両方に区分があるので、まず春試験を受け、だめなら秋試験という2段構えができます。大学3年生(21歳)のうちに秋試験を受けておく手もあります。
令和9年度(2027年度)の日程はいつわかる?
令和9年度の早期SPI枠の日程は、例年どおりなら11月下旬に発表される見込みです(令和8年度分は2025年11月21日に発表)。春試験・秋試験を含む全体の日程は、1月上旬に発表されるのが例年の流れです。
各試験の日程と合格発表日は、特別区の試験日程・合格発表はいつ?に一覧でまとめ、発表されしだい更新します。
第2次試験の面接・プレゼン対策
どのルートを選んでも、第2次試験は面接です。早期SPI枠ではプレゼンテーションも加わります。面接カードの書き方は例文あり!特別区の面接カードの書き方、面接の進め方は特別区の面接に合格する方法!で解説しています。
特別区の面接で聞かれやすい質問と回答の考え方は、noteの面接テキストにまとめています。

まとめ
- 早期SPI枠は事務だけ。第1次はSPI3、第2次はプレゼンテーションシート作成と口述試験
- 春試験はほぼ全区分。事務は教養・専門・論文で、倍率は2.5倍(令和8年度)
- 秋試験は技術系だけ。第1次は専門試験のみで、21歳から受けられる
- 早期SPI枠に申し込むと同じ年度の春試験は受けられない。事務は1回勝負
- 技術系は春と秋の2回チャンスがある
