「特別区人事委員会勧告」は、東京23区の職員の給料とボーナスを決める出発点になるものです。毎年10月ごろに出され、ここで初任給やボーナスの月数がほぼ決まります。
この記事では、勧告のしくみと、2026年10月13日に出た令和8年の勧告の中身、給料表の読み方をまとめます。
令和8年勧告のポイント:Ⅰ類(大卒程度)の初任給は241,500円(地域手当込みで289,800円)、ボーナスは年4.9月分から5.0月分へ。
特別区人事委員会勧告とは
公務員はストライキなどの労働基本権が制限されています。その代わりに、中立の立場の「人事委員会」が民間企業の給与を調べ、職員の給与が民間と同じ水準になるよう、議会と区長に改定を勧めます。これが給与勧告です。
東京23区の職員の場合、この役割を担うのが特別区人事委員会です。23区が共同で置いている機関で、23区職員の採用試験もここが行っています。勧告は23区共通で、どの区で働いても給料表は同じです。
人事院勧告との違い
よく似た言葉に「人事院勧告」があります。こちらは国家公務員の給与についての勧告で、毎年8月ごろに国の人事院が出します。特別区の職員の給与を直接決めるのは、特別区人事委員会の勧告のほうです。
| 特別区人事委員会勧告 | 人事院勧告 | |
|---|---|---|
| 対象 | 東京23区の職員 | 国家公務員 |
| 出す機関 | 特別区人事委員会 | 人事院 |
| 時期 | 例年10月ごろ | 例年8月ごろ |
| 令和8年の勧告日 | 2026年10月13日 | 2026年8月7日 |
令和8年の勧告の中身
令和8年は、職員の給与が民間より月15,126円(3.72%)低いという結果になり、その差をなくすための引き上げが勧告されました。
| 項目 | 改定前 | 令和8年勧告 |
|---|---|---|
| Ⅰ類(大卒程度)の初任給 | 232,000円 | 241,500円 |
| Ⅰ類の初任給(地域手当20%込み) | 278,400円 | 289,800円 |
| Ⅲ類(高卒程度)の初任給 | 200,300円 | 209,800円 |
| ボーナス(年間) | 4.9月分 | 5.0月分 |
| 平均年間給与(比較の対象の職員) | 約693万円 | 約724万円 |
- 初任給は9,500円の引き上げです。係長以上の職員も前年を上回る改定になっています。
- ボーナスの増えた0.1月分は、期末手当と勤勉手当に半分ずつ配分されます。
- 月例給は令和8年4月1日にさかのぼって実施され、ボーナスは条例が公布された日から実施されます。
年齢・役職ごとのモデル給与
勧告では、役職ごとのモデル給与も示されています(地域手当などを含む月額)。
| 役職(級・号給、年齢) | 改定前 | 令和8年勧告 | 年間給与の増加 |
|---|---|---|---|
| 職員(1級29号給、22歳) | 278,400円 | 289,800円 | 約22.2万円 |
| 係長(3級37号給、35歳) | 401,040円 | 419,640円 | 約36.7万円 |
| 課長(5級41号給、45歳) | 659,760円 | 680,520円 | 約45.1万円 |
| 部長(6級3号給、50歳) | 779,040円 | 803,400円 | 約54.3万円 |
給料表の読み方
公務員の給料は「給料表」で決まります。給料表は、級(役職の段階)と号給(同じ級の中での段階)の組み合わせでできています。
- 級:役職が上がると級が上がります。上のモデルでは、新人の職員が1級、係長が3級、課長が5級、部長が6級です。
- 号給:同じ級の中で、勤務の成績などに応じて毎年上がっていきます。
- 地域手当:特別区では給料月額の20%が上乗せされます。初任給241,500円に20%を足したのが289,800円です。
採用試験の区分によって最初の格付けが変わり、Ⅰ類(大卒程度)とⅢ類(高卒程度)では初任給に約3万円の差があります。経験者採用の人は、職務経験に応じて初任給が加算されます。
給料表そのものは、勧告の全文(特別区人事委員会のホームページ)に載っています。
人事院勧告(国家公務員)と比べると
同じ年の人事院勧告と比べると、特別区の水準がよくわかります。
| 特別区(令和8年) | 国家公務員(令和8年) | |
|---|---|---|
| 民間との差(月額) | 15,126円(3.72%) | 15,056円(3.51%) |
| 大卒程度の初任給 | 241,500円(Ⅰ類) | 241,500円(一般職) 251,500円(総合職) |
| 高卒程度の初任給 | 209,800円(Ⅲ類) | 209,800円(一般職) |
| ボーナス(年間) | 5.0月分 | 4.70月分 |
初任給の給料月額は、国の一般職と同じ金額です。違いが出るのはボーナスで、特別区は国より0.3月分多くなっています。なお、国家公務員にも勤務地に応じた地域手当があり、東京23区で働く場合は特別区と同じ20%です。
これまでの改定の流れ
| 勧告の年 | Ⅰ類の初任給(改定後) | ボーナス(改定後) | 民間との差 |
|---|---|---|---|
| 令和7年(2025年) | 232,000円(+12,000円) | 4.9月分(+0.05) | 14,860円(3.80%) |
| 令和8年(2026年) | 241,500円(+9,500円) | 5.0月分(+0.1) | 15,126円(3.72%) |
ここ数年は民間の賃上げを受けて、大きな引き上げが続いています。令和7年の勧告前のⅠ類の初任給は220,000円だったので、2年で21,500円上がった計算です。
勧告はいつ給料に反映される?
勧告はあくまで「勧め」なので、実際に給料が変わるのは各区の議会で給与条例が改正されてからです。月例給は4月にさかのぼって改定されるため、条例の改正後に、4月からの差額がまとめて支給されます。
2027年4月に採用される人は、令和8年勧告で引き上げられた初任給からのスタートになります。
給与以外に勧告に書かれていること
勧告と一緒に出される「報告」には、給与以外の人事制度についての意見も書かれています。受験生に関係が深いのは次の点です。
- 採用試験の見直し:経験者採用にSPIを導入し、経験者と障害者の採用の第2次を各区に任せる。Ⅰ類秋試験の技術系の区分を広げ、受験できる年齢を大学3年生相当まで引き下げる。
- 柔軟な働き方:テレワーク、時差勤務、フレックスタイムなどの導入
- 育児・介護:育児休業を十分に取れるようにし、介護のための休暇も申し出やすくする
- 人材育成:若手・中堅の離職が増えていることへの対応、評価基準の明確化
試験の日程や区分の変更は、特別区の試験日程・合格発表はいつ?にまとめています。
まとめ
- 特別区の職員の給与は、毎年10月ごろの特別区人事委員会勧告をもとに決まる
- 令和8年勧告で、Ⅰ類の初任給は241,500円(地域手当込み289,800円)、ボーナスは5.0月分に
- 国家公務員と比べると、初任給の給料月額は同じで、ボーナスは特別区が0.3月分多い
- 実際の反映は各区の条例改正のあと。月例給は4月にさかのぼって差額が支給される
区ごとの平均給与や、採用10年後・20年後の給料は特別区の初任給・給料はいくら?、区ごとの年収は特別区の年収ランキングで比較しています。
給与や待遇が魅力的な特別区ですが、まずは採用試験に合格しなければ始まりません。
ただし、特別区に合格するためには論文・面接を避けては通れません。
なぜならば、特別区は論文・面接の配点が異常に高いことで知られているからです。

この通り、教養・専門の点数がどれだけあっても簡単に逆転が起こります。
したがって、特別区に特化した論文・面接対策を取ることが非常に重要です。万全の対策をして、確実に合格を掴みましょう!


